経営者保証に関するガイドライン
こんにちは。福岡市西区姪浜の司法書士井手誠です。
ある人から「目がキラキラしている」と言われました。良い意味か悪い意味かわかりませんが…
この年になっても、まるで少年のようです。
さて、今日は、会社の経営者以外の方は興味がないと思われますが、昨年12月に公表され、今年2月に施行された「経営者保証に関するガイドライン」についてです。
これまで、日本の中小企業が、会社の事業について金融機関から融資を受ける場合、当たり前のようにその経営者は連帯保証をしなければなりませんでした。
これは、事業を失敗すると、会社の財産のみならず個人の財産(ともすると先祖伝来の財産も)を根こそぎ失うことを意味する怖い内容です。
確かに、経営者のモラルハザード(失敗したら借りたお金を返さない)を防ぐ一定の役割を担っていた面があることは間違いないと言えます。
ですが、一方で、経営に失敗すると全てが終わり、という恐怖で経営者が萎縮してしまい、思い切った事業展開や失敗した事業の早期再生、再チャレンジに踏み切ることができないという側面があることも否めません。
この経営者による連帯保証制度は、世界的にみても非常に稀で、穿った見方をすれば、金融機関は、簡単に経営者保証を取ることで健全な経営をする会社を育てるのを放棄したに等しいと言えるのかもしれません。
日本政府は、こうした経営者による連帯保証という融資慣行について、様々な問題があると認識し、平成25年6月発表の「日本再興戦略」において、一定の条件を満たす場合に保証を求めないことや早期事業再生着手のインセンティブを与えることなどのガイドラインを策定することを明記しました。これを受けて、平成25年12月5日、「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、平成26年2月1日から適用となっているのです。
このガイドラインでは、これまでの金融機関と保証人の関係が従来と大幅に変わっていて、その骨子は次のとおりです。
①一定の要件を満たす経営状況にある会社の場合、経営者やその親族、後継者その他第三者による保証は認めない
②金融機関は、保証契約の必要性について丁寧かつ具体的な説明を行い、過度でない適切な保証金額の設定をする
③もし破産等する場合でも、経営者の手元に財産をできるだけ多く残せるよう検討する(担保が付いている自宅等の不動産をすぐに競売にかけない)
また、保証をせずに融資を希望する場合や保証契約の見直しを求める場合には、ただ申し入れをすればそれでいいわけではなく、以下の3つの経営状況を作り出すことが求められています。
◆法人と経営者との関係の明確な区分・分離
・法人の業務、経理、資産所有などについて、法人と個人をはっきり分けること
・代表者貸付や役員報酬について、社会通念上適切な範囲にすること
・こうした体制の整備や運用について外部専門家による検証を実施し開示すること
◆財務基盤の強化
・財務状況や経営成績の改善を通じて返済能力の向上により信用力を強化すること
◆財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
・法人や経営者の資産負債の状況、事業計画、業績見通し、その進捗状況について情報開示を要求されたら、信頼性の高い情報を開示・説明すること
傍目には、内容はいたって当たり前のように見えます。しかし、経営者からすると、かなりハードルが高いと感じる方が多いことでしょう。
今からスタートアップする企業は、最初から保証なしは難しいかもしれないので、将来的な保証見直しに向けて、上記の経営状況を最初から構築していくのが望ましいです。
現在保証契約をしている経営者は、保証契約が外せないか(一部でも可能)検討を始めましょう。
もしものときに、家族が路頭に迷わなくてすむよう備えておくのも経営者の大事な仕事ですので、意識的に「守り」を行うことが肝心です。
保証契約の見直しに関するご相談にも乗りますので、お気軽にお問い合わせください。
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