不動産の売買(立会い)
司法書士は、不動産売買の最終段階である売買代金の支払(決済)時の「立会い業務」を行っております。
この決済立会いで、司法書士は、一体何を行っているのでしょうか?どんな役割を果たしているのでしょうか?立会料って何ですか?と聞かれることがありますので、下記の例をもとに、少しご説明します。
残代金の決済の場面では、原則として金融機関に関係者全員が集合し、
- 登記に必要な各書類のやり取り、司法書士による確認
- 金融機関から買主への融資の実行
- 買主から売主への売買代金の支払い
- 鍵や売主保管の重要書類の引き渡し
- 売主から金融機関への住宅ローン残額の返済
などが行われます。
この席で、司法書士は、目の前の不動産取引に法的な問題が隠れていないか、水面下でいろんなことを確認しています。
- この書類で一連の登記できるか
- 不自然な言動はないか
- 金融機関の担保がつけられるか
- 売買する意思に間違いないか
- 当事者に間違いないか
- 売買物件は間違いがないか
- 物件の権利状況に変化がないか
- 後から無効となる事由はないか
- 判断能力に疑問がないか
- 売買条件はすべて満たしているか
【法的な問題点(例)】
- 売主本人のなりすましだった、売主が認知症で判断能力がない状態だった
⇒ 契約が無効ですから、例え買主が売買代金を支払ったとしても自分のものにはなりません。名義変更していたとしても、抹消されてしまう運命です。 - 物件の記載漏れがあった、隣の物件だった
⇒ 購入後に買主が物件を利用できないかもしれません - 売買の直前に仮差押えや差押えの登記が入っていた
⇒ その状態でも名義変更は可能ですが、競売されてしまえばその購入者が優先されてしまいますから、将来的に名義を失ってしまう危険が潜んでいます。
後から買主が所有権を失う事態とならないように、この売買は有効に成立していて、登記に必要な書類が揃い確実に一連の登記手続を行える、各当事者の目的全部を果たせる、と司法書士が責任をもって判断して初めて金融機関が住宅ローンを買主さんに融資してくれるのです。この融資実行がないと、買主は売買代金を支払えないため不動産を自分のものにはできないし、売主も売買代金を取得できないことになってしまいます。
司法書士が立ち会うのは、売買契約に基づく売主の義務(登記必要書類の引渡し、抵当権の抹消可能状態の確保)と買主の義務(売買代金の支払い)が同時にきちんと果たされたことを確認し、取引に後から無効となる事由が存在せず、確実に買主の所有権(名義)に変更でき金融機関の権利の保全を行える状態である、と判断するためです。
司法書士がその登記に関する責任を負います(詐欺・脅迫などを除く)から、売主も買主も金融機関も不動産業者も関係者全員が安心して取引することができるのです。
ですから、毎回、大変な緊張をもって臨んでいます。表面上はにこやかに話していますが、頭の中はフル回転しているのです。
これが、司法書士の決済立会い業務の価値です。
買主からすると自分の名義に変わればそれでいいわけで、小難しい登記のこととかはどうでもよいとは思いますが…あまり説明されることはないと思いますので、知っておいていただくと嬉しいです。
「最後にちょろっと来て、高いお金を請求される」なんて言われることもありますが、上記のように非常に重い責任を負っていますので、「万が一のことがないように備えた保険」の保険料とでも思って頂いてお支払いくださるとよいかもしれません。(だから、売買金額が大きくなるとその分リスクも増えるため報酬も上がることになります)
誰に頼んでいいかわからないときや、不動産事業者指定であることに不安や不満があるときは、ぜひ一度ご相談ください。
契約などで別の定めがなければ、原則として、登記費用を払う人(買主)が、自分の信頼できる司法書士を見つけて依頼していいのです。
依頼者のために力を尽くしますので、ぜひご用命くだされば幸いです。
なお、冒頭の「関係図」に載せた登記が全部終了した後の不動産登記簿では、次のように公示されます。
権利部(甲区) (所有権に関する事項) | |||
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順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権移転 | 昭和42年3月4日 第12345号 |
原因 昭和42年3月4日 売買 所有者 福岡市中央区赫々1丁目2番3号 売主 太郎 |
付記1号 | 1番登記名義人住所変更 | 平成9年8月7日 第98765号 |
原因 平成9年8月7日 売買 住所 福岡市西区繁々2丁目3番4号 |
3 | 所有権移転 | 平成9年8月7日 第98767号 |
原因 平成9年8月7日 売買 所有者 福岡市中央区然々4丁目5番6号 買主 二郎 |
権利部(乙区) (所有権以外の権利に関する事項) | |||
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順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 抵当権設定 | 平成9年8月7日 第12346号 |
原因 平成9年8月1日保証委託契約による旧称再建平成9年8月7日設定 債権額 金800万円 損害金 年14%(年365日日割計算) 債務者 福岡市中央区然々4丁目5番6号 売主 太郎 抵当権者 福岡市中央区各々4丁目5番6号○○信用保証株式会社 |
2 | 1番抵当権抹消 | 平成9年8月7日 第98766号 |
原因 平成1年2月3日 解除 |
3 | 抵当権設定 | 平成9年8月7日 第98768号 |
原因 平成9年8月7日保証委託契約による求償債権同日設定 債権額 金1500万円 損害金 年14%(年365日日割計算) 債務者 福岡市中央区然々4丁目5番6号 買主 二郎 抵当権者 福岡市中央区黙々7丁目8番9号○○信用保証株式会社 |