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企業法務コラム

名義貸し役員の悲哀

「何もせんでいいけん、役員として名前だけ貸しとって。絶対に迷惑かけんけん!」

こんなことを聞いたり、誘われたり、うっかり話に乗ってしまったような方は…残念ながら読者にも何人かいるかもしれない。

取締役会を置く会社には、最低限、取締役3名が必要なことから、事業に無関係な親族や知人を就任させる例が多い。会社が上手くいっているときは、特に問題は表面化しないが、もし、会社代表者に不正行為などがあって取引先に損害を与えた場合、はたしてその名義貸し役員の運命はどうなるのか!?

取締役には、任務をきちんと遂行する義務や代表取締役などの業務執行を監視すべき義務があり、業務執行が適正に行われるようにする職責がある。取締役が、悪意(不適切な業務執行を知っていた)または重過失(簡単に知れたはずのに漫然と見過ごした)によってこれらの義務に違反し、会社や第三者に損害を被らせたときは、責任を問われ損害賠償責任を負うことになる(会社法423条・同429条)。

会社法は、名義貸しの役員の存在を認めていないため、取締役就任を承諾した以上これらの義務から逃れることはできず、仮に「名前だけ貸してもらうだけでよくて、責任は負わせない」などと約束したところで何の役にも立たない。確かに、一定の場合には免除されることもあり得るが、名義貸し役員とわかっていながらあえてそんな賭けに出ることもないだろう。

ということなので、万が一、現在、名義貸し役員にあたる方がいたら、早急に辞任することをお勧めする。冒頭の悪魔のような囁きに乗ったがために、あとあと泣きをみることなきようご注意いただきたい。

BisNavi201110月号掲載