1人株主の会社がはらむ危険
平成18年5月を境として、現在、株式会社を設立するにあたって、出資金は1円以上であればよく、また出資者=株主も1人で構わない。格段に株式会社が設立しやすくなったため、株主が1人しかいない会社が増えている。
株主が1人であるメリットは、経営の意思決定を迅速に行うことができる点にあり、またデメリットは、その株主にもし「何か」が起こった場合、最悪会社経営がストップしてしまう可能性がある点だ。
「何か」の例を挙げよう。
①1人株主が死亡した場合において、相続人が複数いて話し合いがまとまらないとき
②1人株主が認知症になった場合
③1人株主が事故などで意識不明の状態になってしまった場合
もし上記のようなことがあったら、株主総会を開けない=会社経営できなくなるのである。会社経営の継続を考えた場合、1人株主の会社は、そういったことが起こり得ると想定して危機管理対策をとっておくことが肝要であるし、その対策を行っておくことは経営者の責任だろう。
1人株主の会社と取引をしている会社にとってもこのことは重要で、もしかしたら取引継続できなくなるかもしれない、という危険性(リスク)を分かった上で付き合っておくと、いざというとき慌てなくてすむ。
1人株主の危険性を回避するための対策としては、定款の記載内容を変更したり、遺言を書いたりすることが考えられるが、法的効力の部分で穴があると元も子もないので、きちんと専門家へ相談しながら進めることをお勧めする。
人間いつどうなるか、は神のみぞ知る。だが、対策は現時点でもできる。後は野となれ山となれ、では残された者が大迷惑を被るので、道筋だけはつけておいて頂きたい。
BisNavi201209月号掲載