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企業法務コラム

1人株主兼社長が亡くなった

筆者は、9月号に「1人株主の会社がはらむ危険」という記事を書いた。11月中旬、まさにその危険どおりの事が起こった会社の社員から相談があった。

1人株主の社長が突然亡くなり、どうしたらよいか、親族と共に途方に暮れているという。4年前に起業して、社員一丸となってがんばった結果、徐々に売上を伸ばし、ようやく1年前から収益が上がって取引先も拡大している矢先とのこと。亡くなった社長は若く子どもも小さい。社員数名は、会社存続できるか否か不安な毎日を過ごしている。

社長は、この数年間の運転資金、そして設備投資のための融資を受けており、親族はその借金を負いたくないので、全員が相続放棄の意向である。

となると、会社の株式は誰も相続する者がいなくなる、という事態に陥る。すなわち、すぐに新たな代表取締役(社長)を選任できなくなる=経営が継続できなくなるのだ。

何も対策を取っていないと、こういう事態が起こった場合に、打つ手がほとんどない。現在、この会社は、筆者も携わって方策を練っているところだが、ほとんどお願いベースであるため、最終的には特別清算又は破産ということになる可能性が高く、社員もそれを覚悟している状況である。

人は必ず死ぬ。そして、時期は選べない。

経営者の死亡は、「経営」という観点でいうと、確率100%のリスクなのだ。1代でつぶしていいという方はいいが、そうでないなら、対策を取っておかねば残された家族・社員・取引先の皆が困る。

事業承継の対策は、経営者の義務である。何も最初から完璧な対策を取る必要はなく、まずは経営を続けるための最低限の対策からスタートしよう。大事なのは、動き始めることだ。次回は、事業承継の選択肢について。

BisNavi201212月号掲載