司法書士から見た「半沢直樹」
最終回まで高視聴率を保った「半沢直樹」。ご覧になられた方も多いことだろう。少しは銀行のやり方や、担当者が何を考えているか参考になったかもしれない。知り合いの銀行員数名から聞くところによると、誇張はされているものの概ね内情に忠実に描かれているのではないか、とのことだった。
一方、司法書士からすると、一般視聴者が気付かないであろう細かい点で、「それはないだろ!」と突っ込みを入れたくなる部分もあった。もちろんドラマなので目くじらを立てるつもりは毛頭ないが、後半部分で気になったところを2つピックアップしてみる。
1.大和田常務の奥様の名字
ドラマでは、タミヤ電機が4年前に銀行から借りた金を㈱ラフィットに横流ししていることを近藤が相談し、渡真利が社内の信用調査資料を見ると、棚橋貴子が代表を務めるアパレル会社であることが判明、その後、近藤の尾行のおかげで大和田常務と棚橋社長が夫婦であることがわかった。という流れだったが、現実ではこんな迂遠なことはしない。なぜかというと、法務局で会社の登記をする際、代表取締役は印鑑証明書を提出して、そのとおりに住所氏名を登記するからだ。要するに、たとえ名刺やHPで旧姓を使っているとしても、登記事項証明書を見れば本名は一目瞭然なのである。実際は、4年程度であれば、当然銀行の保管資料もそうなっているはずだ。
2.大和田常務の解任
最終回で、大和田常務を解任する云々の話が出ていた。しかし、これも冷静に考えると微妙である。常務職の解職は取締役会で可能だが、取締役の解任そのものは株主総会の決議が必要だ。当然、その開催費用も解任理由も必要になる。ドラマでは、頭取が大和田を平取締役降格だけの温情措置をしたように受け取れるが、実際には頭取権限や取締役会で解任することは不可能なのだ。その意味では、恩を売る機会をつかんだ頭取が一枚上手か。
色々書いたが、私も日曜21時を楽しみにしていた口なので、次回作を期待したい。
BisNavi201310月号掲載