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企業法務コラム

通勤中の自転車で事故を起こしたら

皆さんの会社では、従業員の通勤はどのようなルールになっているでしょうか?

公共交通機関や徒歩による通勤の場合は、そんなに心配することはありませんが、自動車・バイク・自転車などで通勤するのを可としていたり、ルール上ダメとなっているのに黙認していると、従業員が通勤中に起こした人身事故(ケガ・後遺障害・死亡)等に関連して、もしかすると会社が損害賠償金を支払う羽目に陥るかもしれません。

いやいや、そりゃ事故起こした本人の責任だろ、と思われるのもごもっともです。しかし、事故の被害者側(と、その弁護士)からすると、加害者が任意保険に加入していない従業員だったら、「よし、取れるところから取ろう」と考えるのはごく自然なことで、裁判で会社に対し「使用者責任」や「運行供用者責任」などを根拠として、賠償金を負担しろと主張するだろうことは明白です。

とは言え、訴えられたとしても、会社の責任が認められるには使用者(会社)の業務執行中であったことが必要で、現実の会社業務そのものではなく外形から業務執行性があるか、すなわち加害者量の所有権の帰属・業務の内容・業務との関連性や会社の内規や許容の程度などを総合的に考慮して判断されますから、一概に責任を負えとはなりません。ただ、過去の裁判例では、マイカーやバイク通勤が事業の執行とみなされたケースがいくつもありますから、会社としては気を配っておかないといけないことは言うまでもありません。そして、この使用者責任は、自転車でも同様のことが言えます。

ここ数年、歩行者と自転車の事故で多額の損害賠償が認められたという報道が目に付くようになりました。従業員がきちんと任意保険に加入していて賠償金を賄えるなら何の問題もないのでしょうが、そうでなければ怖いところです。自転車通勤はノーマークであることが多いですから、読んでドキッとした方は、全従業員の通勤状況や任意保険加入状況を確認しておかれることをお勧めします。

BisNavi201804月号掲載