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企業法務コラム

退社した社員が同業を営む

「元社員(元部長)が、退社した後に自分で会社を設立して、当社と同じ(または類似の)商品を取引先に、積極的に営業して販売している。辞めるときに誓約書などは取っていないけど、何かできない?」

という内容の相談がありました。会社側からすると、そんなことがあるとあまり気持ちの良いものではないでしょうし、取引先を奪われた結果、売上や利益が減ってしまってはたまらないという本音も当然あるでしょう。ただ、元社員は、辞めてからまで会社に縛られるいわれはない、自由競争だろ!と思っているかもしれません。

結論から言うと、日本人には職業選択の自由がありますので、基本的に辞めた元社員が同じ商売をすることを、全面的に禁止することはできません。ですが、次のようなポイントを抑えた就業規則や誓約書・念書、競業避止契約があれば、元社員の競業について、ある程度制限することが可能となります。

①守るべき企業の利益

②従業員の地位

③地域的な限定

④競業避止義務の存続期間

⑤競業行為の範囲

⑥代償措置の有無

ただし、上記①~⑥は、書いている内容が無制限に認められるというわけではなく、合理的な範囲を超えて元社員を不当に拘束するような内容は無効になる可能性がありますから、注意が必要です。

この手の争いは昔から幾度となく繰り返されてきましたので、ある程度裁判例は積み上がっています。それなりに社内の地位が高い(機密性のある情報に触れ得る立場の)社員や会社役員が辞める場合は、必ず手当てをしておきましょう。辞めてからでは遅いので。  なお、冒頭の相談で、元社員が、辞める前から取引先を奪う準備をしていたり、厳重に管理されている顧客情報や技術情報を利用した時は、損害賠償請求できる余地があります。

BisNavi201611月号掲載