民事裁判のよくある誤解
前回は、当事者でない第三者が判断する裁判でモノを言うのは、何より証拠ですよ、ということをお伝えしました。今回は、民事裁判で皆さん誤解しているなぁと思う点について書いてみます。
1.真実が明らかになる
そんなことはありません。あくまで、当事者が主張した事実が証拠に基づいて妥当であるか判断するに過ぎません。真実はお金を貸したのに、それを証明するものがなければ、貸してなかったものと判断されます。
2.証拠探し
証拠は裁判所などが見つけてくれるとか筆跡鑑定してくれるなどと勘違いされている方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。あくまで、その事実があったと主張する当事者が提出しないといけません。
3.訴訟費用の負担
判決や和解では、「訴訟費用は、被告の負担とする」などの訴訟費用の負担に関する記載がされています。ただ、ここでいう訴訟費用とは、例えば裁判所に納めた収入印紙代や郵便切手代、証人の日当、裁判期日の出頭旅費などのことであって、専門家報酬は含まないのです。ですから、訴訟に勝ったとしても自分が依頼した弁護士報酬などを相手方に請求できるわけではありません。
4.判決を得れば相手方から金銭を得られる
金銭の支払を請求する訴訟で勝訴したからといって、裁判所が相手方から金銭をむしり取って勝訴者の預金口座に振り込んでくれるといううまい話はありません。相手方が任意に支払わなければ、相手方の持つ財産(預金口座・給与・家財道具・自動車・不動産など)を具体的に指定して差し押さえ・換金する手続を行う必要があります。相手方がどんな財産を持っているか分からないと困難ですし、差し押さえたとしても二束三文にしかならず、費用の方が高いこともざらにあります。
以上のように、裁判は、頭の中のイメージと現実が乖離していることが少なくありませんので、訴えたい・訴えられたときは必ず専門家に相談するようにしましょう。
BisNavi201705月号掲載