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企業法務コラム

株の譲渡承認請求されたら

前回、株主が死亡した場合のリスクとして、「譲渡承認請求」の可能性について言及した。実際にされると意外とダメージが大きい制度なので、もう少し詳しく説明する。

通常の中小企業は、株を誰かに譲渡する(売買・贈与など)ときには株主総会または取締役会などの承認がなければダメですよ、と定めている所謂「非公開会社」である。これは、会社にとって好ましくない人物が株主になるのを拒むためである。しかし、そういった制限がある株でも、法は譲渡承認請求の制度を認め、投下資本回収の道を開いている。

もし、株主又はその譲受人から承認請求された場合、会社には大きく3つの選択肢(①承認する②拒否する③無視する)がある。

 承認請求されたにも関わらず、2週間無視した時は、その株の譲渡を認めたこととみなされるので、お勧めできない。では、拒否する場合は、拒否することだけを伝えればそれでいいのか?残念ながら、答えは『ノー』である。

 拒否するときは、①会社が買い取る②指定買受人が買い取る、ことが必要となる。つまり、請求がなされたら、承認するか、会社含め誰かが買い取るか、しかないのだ。

そして、その買取り金額は、株を譲渡する株主との協議で決めるが、決まらなければ…法で決められた価格か裁判所の価格決定によることになり、高く買い取らねばならなくなるのだ(原則「純資産価格」)。  この点からしても、株主が分散していることの危険性が理解できると思う。その昔、会社経営者の相続税節税で流行ったのが、親戚に5%未満の株を贈与して相続財産を減らす手法である。しかし、最近では株を経営者又は後継者になるべく集中させるのが常識である。いろんなリスクの芽を摘み取る意味でも、今のうちに株主対策を考えよう。

BisNavi201203月号掲載