定款は、あなどれない
「定款」、読みは「ていかん」である。いったいどれだけの中小企業経営者がこの文言に興味を示すだろうか。
定款とは、だいたい、会社の憲法だとか、根本規則だとか、原始ルールだとか言われることが多い。ただ、そう言われても、はぁそうですか、とピンと来ない。社長に尋ねてみると、会社設立時に必要だと言われたから、専門家にお任せか法務省が出しているひな型に則って作成する、という答えが99%返ってくる。会社を設立するときには絶対必要なくせに、そんなに深く考えることも議論することもない、この存在感の薄さはどうだ。
だが、実は、例えば、株主総会の手続きや内容が定款に違反してしまった場合、決議が取り消される可能性があるなど、会社にとって非常に重要なものであるし、また事業承継・資金調達・危機管理・内部統制などの経営課題に戦略的に利用することもできる代物であることはあまり知られていない。
自宅を建てるときになぞらえてみるとわかりやすいだろうか。思うに、定款の役割というのは、建物の仕様や骨組を決めていく設計図のようなものだ。ひな型で作成したら、とりあえず建物は建つけれども、画一的で可もなく不可もない。一方、デザイナーズ住宅のような設計図も可能だ。会社法では、定款による会社の自治(法令に違反しない限り定款で定めればそれがルールになること)が相当認められているので、これを上手に活かすと他にはないオンリーワンのものが出来上がるだろう。まぁ、見た目も大事だが、建物なので、傾いたり、雨漏れしたり、すきま風が吹いたり、強度不足だったりなどの欠陥住宅にならないよう、まずはしっかり基本性能を維持しよう。
いろんな会社の定款を拝見するが、専門家の目から見ると、残念ながら漏れや不足があったり、時代遅れの定款が多い。一度、自社の定款をじっくり眺めてはいかがだろうか。後から痛い目を見なくていいように。
BisNavi201308月号掲載