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企業法務コラム

印鑑はいらない?

法人では、社内規定やセキュリティ上の理由で社外に持ち出せないことも多く、社内文書の上長決済の証として印鑑が必要とされることもあります。「はんこ」は、我が国での生活や仕事に根ざした文化・慣習です。

ところが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う外出自粛要請中、TVリポーターが道行く人に外出理由のインタビューしたときに「押印するために出勤しています」と回答した方がいたことで、社員を感染リスクにさらしながら出社させるとは何たる前近代的な考え方だ!臨機応変に対応すべき!いつまで印鑑を使い続けるのか!といった、いわば印鑑否定論がにわかに沸騰しました。 

GMOインターネット㈱や㈱サイバーエージェントなど大手IT企業が次々と印鑑廃止の意向を表明し、IT担当大臣が「はんこのための出社はやめるべき」と発言し、経団連の会長が「はんこはナンセンス」「デジタルの時代に合わない」と語るなど、今や印鑑はすっかり悪者になりました。

私の仕事は印鑑とともにあり、切っても切り離せないものです。確かにビジネスの場面ではスピード感も重要ですから、いちいち印鑑を押すのに時間がかかり煩わしい、電子署名でスパッと進められると良い、という意見はよくわかります。法律上、契約ごとは当事者の意思の合致さえあれば成立しているのであり、押印はもちろん書面の作成さえ要件とはされていません。

ただ、押印は、最終的には裁判での有用性があります。6月19日に内閣府・法務省・経産省の連名で「押印についてのQ&A」というペーパーが出て、訴訟上の取扱いや証明などのルールが非常によくまとまっておりました。非常に価値があります。というより、これは経営者なら知っておくべき情報です。

それにしても、電子署名等のITに対応できない法人が数多いと推測されますから、まだまだ印鑑は手放せないでしょうね。

BisNavi202007月号掲載