ラピス司法書士事務所 | 福岡市西区姪浜

ラピス司法書士事務所 お問い合わせ
お問い合わせ

企業法務コラム

佐野SA従業員ストライキ事件

今回は、最近ではちょっと珍しいストライキ(今年8月14日から9月23日まで)事案を取り上げてみます。

栃木県の佐野サービスエリアは、佐野ラーメンというご当地グルメが人気で、年間利用者数は170万人にも上るといいます。この佐野SAの運営をNEXCO東日本から委託を受けているのが、ケイセイ・フーズという会社です。このケイセイ・フーズの親会社の不安定な経営状態を銀行が懸念して6月の新規融資を凍結したことで信用不安が生じ、7月頃から商品の納入がなくなるという異常事態に陥っていたため、納入の回復を企図して支払サイトの前倒し(翌々月末→翌月末)を担当部長が提案し、社長了承のうえで取引先との覚書を作成したところ、安心した取引先から商品納入が再開されました。ところが、社長がこの覚書を反故にしたいと言い出し、担当部長が反発したら一方的に解雇されたことを発端として、従業員が、「社長の経営方針にはついていけません。解雇された部長と支配人の復職と経営陣の退陣を求めます。これは従業員と取引先の皆さんの総意です。」と書かれた紙を貼り出し、かき入れ時であろう今年8月14日からストライキ(フードコートや売店の営業拒否)に入った、という経緯です。

ストライキとは、「労働条件の維持改善を目的に労働者が労務提供を拒否し、通常の業務を阻害する行為」のことで、労働関係調整法第7条に定める争議行為の一種とされています。会社側と対等な関係で交渉することは難しいことから、要求の実現のための手段としてこうした団体行動でプレッシャーを与えることが認められているのです。

今回は、現場に慕われていた男気のある担当部長が呼びかけたので従業員全員が1人の落後者も出さず39日間戦い抜きました。この部長のような人材は得難いものなのに、なぜ排除しようとしたのか理解に苦しみます。  気になる戦いの結末は…経営陣退陣、部長復職で全従業員が新経営陣のもと佐野SAでの営業再開。

BisNavi201910月号掲載