パワハラの線引きは?
「うちの上司がうるさくてさ~『なんでこんな簡単な事ができないんだ!』『何遍も同じこと言わせるな!』『辞めちまえ!』とかおっさん何様やっちゅーねん。」
「それくらいだったらまだいいじゃん。俺なんか営業ノルマが未達のときは、もっとくそみそに言われるぜ。ムカつくわ!」
休日前の居酒屋でこのような会話を耳にすることも少なくありません。
皆さんご存知の「パワハラ」は、職場での地位に基づき、権限を濫用・超越した嫌がらせと定義されます。上司が部下に対して行うのが典型例ですが、一口にパワハラと言っても、その内容や程度は数限りなくあります。
相談を受けている中には、その程度で!?と思うこともありますが、本人にとっては深刻です。昔の体育会系のノリは時代遅れであることは確かでしょう。
パワハラを行った本人が悪いのは当然ですが、会社がパワハラを放置していたと認定されると使用者責任や安全配慮義務違反に問われ、損害賠償が必要になりますし、そのことが広まるとイメージダウンもあり得ますから、会社としても見て見ぬフリはできません。
過去の裁判例を紐解くと、暴行・脅迫はもちろんのこと、仲間はずれや無視、上司の私的な用事を頼むことなどもパワハラと認定されています。上司からすると、日常業務の中で部下のミスを叱責することは当然のことでしょうし、指導とパワハラと何が違うのか頭を悩ますことがあると思います。指導について、正当な業務の範囲を超えると判断されるポイントは、①執拗か②人格否定となる侮辱的なニュアンスか③叱責の場所や時間④部下の落度の程度、などです。
いちいちこんなことを考えて叱責するのも憂鬱なことかもしれませんが、ご自分を守るためにも気を付けておくことをお勧めします。
BisNavi201507月号掲載