スポーツ中のケガの責任
5月の話題をほぼ独り占めしたと言っても過言ではない「日大アメフト部悪質タックル事件」。タックル映像の強烈さ、加害選手の潔さ、監督や大学関係者の対応のまずさなど話題に事欠きませんでした。きっと皆さんの中でも様々な意見があることでしょう。
さて、スポーツ中、自分以外の誰か(相手選手が多いと思われます)に対して、故意にケガをさせてしまった場合、加害者はどんな責任を負うことになるのでしょうか?
原則として、法的責任と道義的責任を負うことになるでしょう。法的責任とは、まさしく法律に照らして責任が認められること、道義的責任とは、一般的に人としての常識に照らして正しい道を守る倫理的な責任です。
法的責任には、刑事上の責任と民事上の責任の2つがあります。通常のルールの範囲内で生じたケガであればまだしも、明らかに危険・悪質な行為で故意にスポーツ中に人を傷つけてしまった場合、刑事上の責任としては、暴行罪や傷害罪などが成立し得る可能性があり、民事上の責任としては、不法行為による損害賠償を負うことになります。ケガをさせた人間が責任を取るのは当然ですが、故意に人を傷つけたのが監督やコーチの指示だったとしたら、その監督らも共同不法行為として実際の加害者とともに連帯して損害賠償責任を負うことになります。もし、このスポーツが学校の部活動や企業の社会人チームで行われたならば、学校や企業は使用者責任を問われることになるかもしれません。
スポーツの話をしてきましたが、これを企業活動に置き換えると、上司や会社の指示で違法な行為を行い他者に経済的・肉体的な損害を与えた場合は、違法行為を行った者はもちろん指示をした上司や被用者を指揮監督する企業も同様に損害賠償責任を負うことになります。平然と経営者がそんな指示を出すこともありますが、発覚したとき何も良いことはありませんので、やめときましょう。指示してないと言い張っても見苦しいだけかもしれませんよ…。某大学の某監督のように。
BisNavi201806月号掲載