沖縄の戦後は終わっていない
こんにちは。福岡市西区姪浜の司法書士井手誠です。
先日、沖縄出張に行ってきました。梅雨明けしていたので、爽やかな晴天でしたが何一つ観光することなく、仕事してました(泣)
とは言え、美味しいものを頂いて、舌鼓を打ってきました。(観光客がほとんど行かないソーキそばのお店を紹介してもらいました!)
沖縄出張で、某市役所の妙齢の戸籍係の方と話をしたのですが、印象に残った言葉が…
「沖縄には、戦災で滅失したまま製されていない戸籍や戦後から日本復帰にかけて内容に齟齬の生じている戸籍が数多く、裁判所や法律家の方と連携しながら一つ一つ復元・訂正を重ねて います。大切な歴史を紡ぐ作業ですから、大変やりがいを感じます。 戸籍の訂正を続けているという意味では、沖縄の戦後はまだ終わっていません。」
沖縄の戸籍は、非常に複雑な経緯をたどって、現在に行きついています。
ほんのさわりだけ、ご紹介します。
戦火が及んだ場所によって、それまでの戸籍がなくなった(滅失した戸籍=約120万1000件)ため、終戦直後に米軍の統治下のもと沖縄で調製された臨時戸籍、沖縄に本籍を有する日本在住者の保護のため福岡法務局で調整された仮戸籍を経て、本戸籍へと移行していきました。
これら臨時戸籍(沖縄戸籍)や仮戸籍(本土戸籍)は、滅失前の謄抄本や副本等の資料がないなか、専ら申出者の記憶に基づいたものであったため、内容に確実性のない実に不完全なものでした。
この、戸籍が二重に存在する状態を解消するため、一元化の措置を行うことになるわけですが、双方の申出事項に齟齬が生じていること(例えば、親の名前が一字違う、生年月日や死亡年月日が異なる、姉なのに妹と記載されているなど)が多かったようです。
生じている相違点については、職権で訂正されたものもありましたが、未処理のものはそのままの状態で沖縄の日本復帰となりました。
ざっとこうした経緯ですから、戸籍を取得すると、「?」となるものがあります。
こうした戸籍の内容を訂正する場合には、家庭裁判所に「戸籍訂正許可」の申立を行い、許可審判を得る必要があります。
裁判所の審判ですから、ただ単にここをこう訂正して欲しい、と書けばいいわけではなく、少なくともその訂正の裏づけとなる資料や証言等が求められるため、道のりは平坦ではありません。
私が引き受けている仕事は、本籍が沖縄である現在無戸籍状態のAさんの妹の相続手続を行うことです。
遺産分割協議の前に、Aさんの戸籍を再製し、失踪宣告を申し立てる必要があるため、調査や調整を行っています。
法律だけに限らず、論文や新聞などのいろんな文献資料に当たってみましたが、戦後の日本人の復興にかける心意気や多大な苦労に多少なりとも接して、深く敬意を抱きました。
私が今回行う仕事も戦後復興の一環かもしれない、やはり、日本人として歴史を知ることは大切だ、そんなことを思えた良い出張でした。
当事務所は、「まもる」「備える」をコンセプトに以下の業務を行っております。
■「安心」をまもる → 相続対策・生前贈与・争いの事前予防・トラブル対応
■「資産」をまもる → 財産管理・不動産登記・成年後見・民事信託
■「企業」をまもる → 契約助言・事業承継・商業登記・事業再生・法務顧問
■「関係」をまもる → 遺言・相続手続・成年後見・各種裁判所提出書類作成
■「権利」をまもる → 裁判手続・裁判所提出書類作成・不動産登記